保育園運営

保育園・こども園におけるキャリアパス制度・処遇改善Ⅱとはいったい何?

保育園、こども園の園長先生、主任先生、リーダーなど、職員育成を担当されている先生向けに、「キャリアパス」について取り上げたいと思います。

誤解してませんか? キャリアパス、処遇改善II

私は保育施設の人材育成コンサルタントとして、保育施設のキャリアパス制度の設計、運用などのお手伝いをさせていただいています。

保育施設の園長先生方にお集まりいただきキャリアパスのお話をする機会があるのですが、
その場で園長先生方のお話をお伺いしていると、
「ポイント」という言葉が飛び交うことがあります。

「研修ポイントを取っていかないと・・・」
「ポイントを貯めていかないと」
といった具合です。

「ポイント?」

どうやら「処遇改善Ⅱについて国が求めるキャリアアップ研修」のことを「ポイント制のようなもの」と仰っているのです。

かいつまんで言うと
「処遇改善Ⅱを受け取るための研修ポイントがキャリアアップ研修で、その制度がキャリアパスだ」ということのようです。
ポイント制というと、どこかお店のお得ポイントを思い浮かべてしまいます。
ポイントを貯めると「何か良いことがある」。
「キャリアアップ研修を4科目履修する(=ポイントを取得する)と副主任になれて40,000円もらえる(何か良いこと)」という図式ですね。
確かにそれも「不正解ではない」とも思います。
ただ正直申しますと、それは「あまりに本質から外れた理解であり、かつもったいない」。

確かに、
キャリアパスのことをざっくり理解し、キャリアアップ研修の受講と処遇改善Ⅱとの関係性という「図式」もなんとなく理解していても、実際にこれを園長の手だけで園内で運用するという段階までくると、あまりに難解すぎて、得体のしれないものなのではないかとお察しします。
ですから、この複雑怪奇で難解なものを、「研修ポイント制度」と翻訳せざるを得ないのではないか。
それ以上やっかいなものにしてしまっては、体力がもたないのではないことがわかっているからこそ、ポイント制度にしておこうとしているのではないかと私自身は分析しています。

キャリアパスは職員の成長のチャンス

しかし・・・この複雑怪奇かつ難解な「キャリアパス」という代物は、「誰かが翻訳さえしてくれれば」
実は働く職員にとっても、さらに保育園・こども園という組織にとっても非常に素晴らしい制度です。
特に、「職員の成長や、職員自身の成長実感、承認欲求を満たされる機会が構造的に少ない」保育園・こども園にとって、特に素晴らしい制度で、一つの「機会=チャンス」だと個人的には捉えています。

チャンスを活用しましょう。

その素晴らしい制度が、単に「手当をもらうためのポイント制」だと翻訳されてしまったのではあまりにもったいない気がしています。
今回の「キャリアパス制度と処遇改善Ⅱ」をそれぞれの園でどのように翻訳・解釈し、運用するかというのは、最終的にはそれぞれの園で決められることだと思います。
ここに「あるべき論」を振りかざす気持ちも毛頭ありません。
ただ、
「職員がなかなか育たない」
「もっと職員がいきいきとやりがいをもって働けるようにしてあげたい」
「保育という仕事のすばらしさ、魅力をもっと多くの学生に感じてほしい」
そうお考えの園長先生にとっては、一度チャレンジされることをお勧めしますし、どなたかに翻訳してもらって伴走してもらうことを強くお勧めします。
是非この機会を上手く活用してほしいと願ってやみません。
ただ、そのためには、まずは「キャリアパスと処遇改善Ⅱ」について、正しい理解が必要です。
そして、次にそれを実際の園でどのように運用していくのかをイメージしていけることが重要だと思います。
非常に良い制度ではあるけれど、図体が大きすぎて手に負えないあまり、「研修ポイント制」になり下げてしまっている感があります。
そして、園が「研修ポイント制度」だと翻訳してしまったあまり、職員間や園内でも様々な混乱が生じる危険性をはらんでしまっていると感じます。

仕事の報酬

田坂広志氏の「仕事の報酬」という著書の中に、
仕事の報酬には2種類あって、
1 「結果として与えられる報酬」と、
2 「自ら求めて得るべき報酬」とがあると。
そして、本来、「給与や手当」というものは、
「結果として与えられる報酬」なのだと。
では「自ら求めて得るべき報酬」とは何かというと、「能力」「仕事」「成長」の三つにあって、そう考えることの方が豊かなのではないかと、確かそのようなことを述べられていたと記憶しています。

保育園・こども園の仕事の報酬は…?

「キャリアアップ研修ポイント制」は、処遇改善費という「手当」を、保育園・こども園の皆さんが、「自ら求めて得るべき報酬」に位置付け、奔走・混乱しまっているような気がしてなりません。
これは、もしかしたら大きな「誤解」からきているのではないかと思っています。
保育園やこども園で処遇改善のご説明などをしていると、どうしても皆さんの視点は、「私はいくらもらえるのか」や、「どうしたら処遇改善費がもらえるのか」「あの人は40,000円もらっている・・・」に行きがちです。
もちろん「お金」は大切です。
しかし、お金という目に見える報酬「だけ」に目を向けることなく、目には見えないけれど、「実は大切な報酬」を見失うことのないように今回のことを受け止め、取り組んでいっていただければと切に願っています。
「別にもらえるものはもらえばよいではないか。」
確かにそういう理解もあっていいと思います。

しかし、今回の制度を「もらえるものをただもらえばいい」というだけで済ませるとすればあまりにも勿体ないのです。

この制度を前向きに捉え、組織整備やマネジメントの必要性を改めて認識し、園内の職員育成や働く職員のセカンドキャリアの応援などに活用していくことができる良い機会にも関わらず、みすみすお金をばらまいて終わりでは・・・あまりに残念だからです。
少子化が言われ、こども施設は「選ばれる時代」と言われて久しいですが、上手に活用していきさえすれば、より魅力的な園づくり、他の園との差別性にきっとつながっていくものと確信しています。
では、このテーマをどう理解していけばいいのか・・・。
「キャリアパスと処遇改善Ⅱ」をひとつのものとして捉えると「話がややこしく」実は私の頭自体も混乱してしまいます。

ですので、「キャリアパス」と「処遇改善Ⅱ」を一旦分けてお話をさせていただき、その後合体させた方が整理して理解できると思っています。
そこで本日は「キャリアパスとは何か?」の概要についてお話します。

キャリアパスとは

キャリアという言葉の語源は「轍」なのだそうです。
そして、パスというのは「道」のこと。
雪道を馬車で走ってきて、ふと後ろを振り返ると自身が辿ってきた道(轍)を見ることができます。
あ~こんな風にして登ってきたんだな・・・と。
これまで登ってきた道を踏まえ、振り返り、これから先歩むべき道を思い描くのです。

キャリアパスのイメージ

私がかつて働いていた会社は、資格取得のための講座費用を会社が負担し、社員に資格取得を奨励していました。
例えば総務部の職員は、社会保険労務士の資格取得制度があり、何人かは日曜日などを利用して講座に通っていました。彼らは資格取得後も会社に残り、総務部でその資格を活かしながら仕事をしていました。やがて定年を迎え、これまで実務で培ってきたスキルと合わせて、独立して自身で社会保険労務士事務所を開業していった方もおられます。

キャリアパス制度というのは、ざっくり言うと上記のようなイメージを持っていただければ良いのではないかと思っています。

保育園・こども園にあてはると・・・

保育園・こども園で申し上げると、
園の「安全管理部門の担当」を任命されたA子さん。
日々の保育業務に従事しながら、かつ園の安全管理の担当として、様々な活動を始めます。
ヒヤリ・ハットの情報の集積や、分析、それを踏まえての提言などを行ったり、子どもにとっての安全意識の醸成の在り方を研修などを通して学び、他の職員への周知を図っていく役割を担います。
保護者の方にも園の安全管理の取り組みを紹介したりと、自身が得た知識をフルに活用します。
当然日々の保育スキルの向上も欠かせません。
また保護者にご理解いただくには、コミュニケーションの能力も必要になってきます。
子どもの安全意識の醸成という場面では、発達の理解も欠かせません。
そうして、「社会人として」「組織人として」備えなければいけないものを身に付けながら、かつ「保育者として」求められる専門性を身に付けながら、さらにスキルを向上させ、やがて、園が定める一定の要件をクリアして「安全管理部門リーダー」としてさらなる活躍を図ります。
ヒューマンスキルと保育のテクニカルスキル・コミュニケーションスキルなども向上させ、晴れて「安全管理部門主任(副主任)」としての資格要件もクリアし、「子ども安全管理士」の資格も園のサポートで取得。
安全管理部門主任として、安全管理のエキスパートとして後輩指導なども行っていきます。
やがて、定年を迎えたAさんは、今まで培った安全管理の経験やスキル、資格を活かし、ボランティア活動や、呼ばれて講演活動に従事・・・等、
「こどもにとっての安全管理の在り方とより安全な子どもの環境の創造」というものが彼女のライフワークとして、セカンドキャリアにつながっていく・・・。
そんなAさんのキャリアアップを園が応援していこうという制度、それが保育園・こども園における「キャリアパス制度」です。

キャリアパスの制度の利点

1 保育園・こども園側からの視点

・より専門的な知識を有した強いチームづくりができる
=「保育の質的向上」

・それぞれの「強み」を活かした職員育成を行うことができ、職員の「やりがい」を創出できる。
=「職員の質的向上」

2 保育者側からの視点

・自身が思い描く保育士像に向けてスキルアップする過程で、より「自分らしく」組織に貢献できる。

・自身の成長実感を得ることができる。

・「セカンドキャリア」を見据えることができ、「いきがい」「ライフワーク」を見出すことが可能。

と言えます。

まとめ

「成長」とか、「キャリアアップ」と聞かされると、何やら「苦しそう」「これ以上頑張れと言うの?」
というイメージがあるかもしれませんが、皆さん自身がそれぞれの「強み」を活かしながら園で貢献でき、成長を実感し、自身の存在価値を認めることにもつながっていくものだという理解をしていただければと思っています。
また、退職後のセカンドキャリアを見据えた場合、少なくとも「セカンドキャリアの選択肢」が広がります。これまで園で培ったスキルをフルに活用していくことが可能です。
何よりも「自分に自信がつく」「自身の人生の意味」を見出すことができるのではないかと思っています。
いろいろ苦しい想いもしたけれど、頑張ってきた自分に対して自信がついてくる。
それはきっと豊かな人生につながっていくものと思います。
そして、そんな「私」を育ててくれたチームに、園に感謝の念が芽生えるのだと思っています。

次回予告

国のキャリアパス制度と処遇改善Ⅱの制度は、皆さんのキャリアアップを国もバックアップして、処遇面でも支援しますと言う制度ですから、活用次第では非常に素晴らしい制度だと思います。
本日はここまでにしたいと思います。

次回は「処遇改善Ⅱ」そして、次々回は合体させて、「キャリアパスと処遇改善Ⅱをどう捉えていけばいいか」少しずつステップを踏みながら、あくまで私なりの考えをお話できればと思ってます。

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