頭数確保の妥協だらけの採用が、後の離職を生んでいる。

 数年前よりは、いくらか改善された感のある保育園・こども園の採用難ですが、未だ園が選ぶことができるには程遠い状況だと感じています。

 紹介会社に高い手数料を支払って確保しないことには、運営すら覚束ないという声も少なくありません。

 求人を出しても応募がない状況で、選ぶなどとんでもない話。

 私の知る限り、面接に来た職員を採用する以外の選択肢は持ち合わせていない、つまりは「妥協だらけの採用」に陥っているという園も数園あります。

 そして、この「妥協だらけの採用」が後の離職を生む一つの大きな要因になっています。

 求める人物像を明らかにすることなく求人するので、たまたま出会った求職者とは、入職後にすり合わせを行うはめになります。

 互いに「こんな筈ではなかった」と思う確率が高くなるのは当たり前で、この状況で「実は相思相愛でした」なんてことがあることの方が不思議というものです。

 さらに、園が求める「いい子」ではないということに加え、掃除の仕方、箒の持ち方から指導せねばなりません。期限も守ってくれません。言ったことが果たして理解で 

 きているのか、反応が薄いのでわかりません。厳しくしてすぐ辞められても困ります。しかし、褒めるとすぐに木に登って降りては来ない。

 ついに休みがちになり、来なくなり、辞めてしまう・・・。

 この問題を改善するには、「採用」と「教育」の抜本的な見直しが必要なのです。

本当は「新任職員だけが問題ではなかった。」

採用・教育は園を点検し、これからの園づくりを考える良い機会。

職員の採用と教育という、この「新たな」課題に直面した時、多くは「新加入」の新任職員側に問題があると誤認するのですが、実は問題は「ずっと以前から」存在しているのです。

例えば、

 ・先輩職員の中に、指導のきつい職員が存在する。

(新任指導の仕方、コミュニケーションの図り方を知らない。)

 ・複数で後輩職員の育成を担う際、職員によって指導の仕方や「指示の内容」が違うなど、園の方針理解や、指揮命令系統がバラバラで新任職員に混乱を招いてしまっている。

(園の理念や方針、目標の理解と共有がなされていない。)

 ・他の職員に仕事を任せることが出来ず、一人で抱えて「忙しい」と言わんばかりの職員の存在。

  (リーダーの仕事の役割や自身の園における役割を理解できていない。)

・できない職員に仕事をさせず、できる職員だけで動いてしまい、職員の成長を阻害している職員。

 (職員育成という観点が抜け落ちてしまっている。)

 ・指示が曖昧で、指導力がない職員。

  (自身が仕事の意義や、意味を理解できていない。)

 ・先輩の子どもへの向き合い方や保育の進め方、業務の姿勢に問題が多く、新任職員を失望させてしまいかねない職員。

(リーダー職員自身が社会性や組織性、リーダーとしてのマネジメントスキルを学んでいない。)

 など、上記に該当する職員も多いのではないでしょうか。

 つまり、改善すべきは「新任職員」ではなく、この状況なのだと言うことです。

職員が「変わるのを待つ」=受動的園運営から、「職員と風土を変える」能動的な園運営へのシフトを図りましょう。

 例えば、

①      園が大切にしている想いや方針を整理し、職員に浸透させる。

②      今いる職員の社会人としての意識・チームの一員としての意識・園の方針理解などを見なおしてみる。

③      園が大切にしている想いを全職員に浸透できる園の組織とそれぞれの役割を明らかにする。

④      職員がやりがいを持てるためには何が必要か、モチベーションの高め方について学ぶ。

⑤      保護者とのコミュニケーションや園内のメンバーとのチームワークを点検する。

⑥      採用のあり方を根本的に見直し、自園の欲しい人材を明らかにする。

⑦      これからの園が目指すべき姿と、そのために必要なスキルの洗い出しと育成計画の立案。

等々、普段漠然とは問題意識を持ちつつも、何から手を付けて良いかわからない問題にメスを入れるべくアクションを起こすことで、能動的な組織運営にシフトすることが必要です。

少なくとも、いつまでも悶々と嘆くよりずっと健康的です。

目指すは、仕事に厳しく、人にあたたかい組織(人)。そしてその先にある「ここ働けて良かった」と職員に想わせる園づくり。

 仕事が「楽」なのは、刹那的には「嫌じゃない」し、職員の離職に歯止めをかける要因にもなり得る。少なくとも刹那的に、ですが。

しかし、そこで残った職員に質的向上は求めるべくもない。

もっと悪いことに、これら成長意欲を持たない先輩職員が園の風土を組成し、成長と変化を嫌う組織風土を醸成していきます。日々「楽」なばかりで、自身の成長を感じることができないことで、

「私はこのままで良いのだろうか?」「もっと他も見て見たい」という職員の出現を生むのです。

何も厳しさを追求せよと申しているのではありません。本当の意味の「楽しさ」を提供していくことこそが園長の使命なのだと言うことをご理解いただきたいのです。

「ここで働けることが自身の成長につながる」「保育って楽しい」「保育という仕事を通して、周りの人の役に立てる人間に成長できている」と感じさせることが、活き活きした職場風土を生んでいくことに

繋がるのです。

新任職員の採用と教育を端緒に、園の組織を点検・整備しませんか。

土壌(職場風土)が整わないと、いくら優秀な職員を採用しても、そのうちモチベーションを低下を引き起こします。もしくは、優秀な職員は黙って去っていくことでしょう。

土壌(職場風土)が整うと、新任職員でさえ、ピリッとしてくるものです。

 「リーダー職員が・・・」「最近の保育者はすぐに他を見て見たいなどと言う・・・」などと嘆くのではなく、新任職員との出会いを契機として、園の組織づくりの第一歩として共に歩んでいきませんか。

株式会社SKSは人材育成コンサルティングと能力開発研修で
保育施設の課題解決をサポートします。