保育園、こども園の園長先生、主任先生、リーダーなど、職員育成に悩まれている方向けに、「職員育成」について取り上げたいと思います。
今回は、園での組織づくりや人づくりを進めていく上で起こりがちな弊害とその対処法についてお話できればと考えています。
キャリアパスの制度作りのお手伝い等をしています。
しかし、いざスタートすると、なかなか思うように進まず、1年~2年で頓挫してしまうということがあります。
私が一番心を痛める場面です。
これには様々な理由が考えられます・・・。
リーダーが職員育成研修に否定的だと
私がかつての職場で「リーダー」と呼ばれる存在であった頃のことを例に、先ほどの続きのお話を進めていきたいと思います。
私は今でこそ、組織づくりや人づくり、特に園の組織風土の醸成やリーダーのマネジメントの研修に携わり、園の理念の必要性や園のトップやリーダーがマネジメントを深く学ぶことをお勧めしているのですが、
かつては、このような研修については、「否定派」でした。
以前勤めていた会社で、「今年度から数年かけてリーダー職員の研修会を実施します」という告知があった際、完全に否定から入ったことをよく憶えています。
「リーダー研修など、実践向きではない研修会をしているより、目の前のお客様の対応が大切」
「目の前の仕事で手一杯」
「これ以上何を頑張れと言うのか」
「必要性を感じない」
これが私の言い分です。
いざ研修会が始まっても、講師の言葉に耳を傾けることなく、言われるがままの受け身状態。
一回の研修が終わる度に、研修内容について上から目線で「論評」する始末。
周囲のメンバーや部下に、研修の不必要性について話をする・・・等など、枚挙にいとまがありません。
つまり・・・なんとしても研修を阻止しようとしていたのだと思います。
今から考えると顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
講師の先生はそれをどのように見ていたのでしょうか。
最悪なのは、かなり周囲に悪影響を及ぼしていたということです。
当然、研修内容を業務に反映する「筈」もありません。
いやはや・・・かつての私は一体何様だったのでしょうか。
そして研修は一年実施して終了してしまいます。
引き続き翌年度に実施されるということもありませんでした。
どうして数年かけて実施すると宣言された研修会が1年で何の成果も導き出さずに終焉を迎えてしまったのか・・・今では知る由もありません。
職員育成の研修の結果
ですが、この一年終了結果は、私(たち)の悪態の賜物だったのでしょう。
そして・・・その後に遺ったものは
「結局何も変わらなかった」
「この研修に意味はなかった」
という虚しい響きだけです。
研修内容や講師の問題である。私たちはそう決めつけていました。
なぜ職員育成の研修が無意味なものになってしまったのか
しかし・・・
実はこの研修を無意味なものにしたのは、何を隠そうこの私たちなのです。
研修内容や講師に問題があったとは到底思えません。
せっかくの成長の機会を「無意味」なものにしてしまうとは、本当にもったいないことをしたと思います。
園のトップは組織(園)をより良いものにしようと「今」を変えようとします。
そして冒頭で述べた通り、組織は人ですから、組織づくりと同時に「人」に働きかけます。
トップの想いを理解してくれて、その想いをリーダーがメンバーに浸透していってほしいと願うからこそ、
同時にその先にそのリーダーの成長を願うからこそ、
共に変革を進めてくれると「リーダー」に期待を寄せるのです。
にもかかわらず、私が犯してしまったように残念な結果に陥る場面があります。
よく考えると、むしろこれは「当然の帰結」だと私は思っています。
トップが組織づくりに巻き込みたいメンバーというのは、
園のリーダー的な役割・立場にある人です。
リーダーが職員育成の研修を無意味なものにしてしまう理由
しかし・・・リーダー的な立場にある人の多くは、「今の状態が安泰」。
今が安泰な人にとって、変化は恐怖、望まざるものでしかないのです。
わざわざ自身の身を危機に晒そうなど、誰も思わないのが自然です。
当時の私自身もきっとそうだったと思います。
1)「現状維持バイアス」
2)「自信がないことからくる恐怖心」
大きくこの2つが作用していたと分析します。
現状維持バイアス
今、何の問題もなく進んでいけているのに、何を新しく導入する必要があるのか?といったところでしょうか。
組織内にいて安泰であるリーダーにとって、
「今」に何らかの力が加わって、現在の組織上の「序列」が崩れてしまったり、
パワーバランスが崩れ去ったり、
新しい何かが始まることで業務負担や覚えなければならないことが増えたりするのであれば、
もはや「今でいいじゃないか」という思考があります。
自信がないことからくる恐怖
何となく経験を積んできたものの、
あくまで自己流で仕事を確立してきただけで、
自分に自信なんてこれっぽっちも備えていない人間が、
リーダー研修に参加し、自身の力のなさを白日のもとにさらされるという恐怖心。
未知なるものへの拒絶感。
この2つです。
自信のなさは、当時の私の中では恐怖として感じていたと思います。
そしてこれらを包み隠すように理由付け(=もっともらしい難癖)を行うに至ります。
講義に対して
「そもそも意味がわからない」「あんなことに意味があるのか?」
講師に対して
「あの言い方が気に食わない」「何言っているのかわからない」等々です。
そうして、「なかなか思うように進展していかない」という状態に陥る。
職員育成に取り組む園長先生にご理解いただきたいこと
園長先生にご理解いただきたいのは、組織づくりや人づくりを進めるに際しては、上記のことは想定範疇においてほしいということです。
さらにプラスしてご理解いただきたいのは、何らかの「変化」「変更」を加える場合、導入当初は何らかの「混乱」があるということもある程度覚悟が必要です。
今まで経験したこともない、不慣れなことに取り組むのですから当然です。
最初は混乱して当たり前なのです。
組織づくり・人づくりに取り組んだ場合、既に述べた通り、現状維持バイアスがかかり、導入に後ろ向きな方も出てきます。
加えて、初期の混乱もあります。
もしかしたら職員の猛反対に出くわすかもしれません。
その時にどう対処するか。
ここに園長の「真剣み」「覚悟」が問われるのだと考えています。
園で組織づくりや人づくりを始める際には、少なくとも上記に記載したものは「想定範囲内」におかれることが肝要です。
職員育成のコンサルタントは適切な人物か
そしてもう一つ。
共に手を携え組織づくりを推し進めていくパートナーである我々コンサルタントの問題です。
そもそも信頼に足るコンサルタントなのか?
共に手を携えて歩むうえで、良い信頼関係のもとで継続的に進めていけるだけの経験や知識、ノウハウ、思考の持ち主なのか?
そして何よりも人として「真摯」に寄り添ってくれる人物なのか?
ここを見極める必要があります。
あまり浮ついた言葉に惑わされず、時間をとってのやりとりを経る中で、しっかりと見極められることを是非お勧めいたします。
但し、一度取り組むと決められた際は、少なくとも3年はコンサルタントと手を携えて、上記の想定範囲内を乗り越えていってほしいと思います。
きっとその先に園長の思い描く世界が少しずつですが見えてきます。
園長先生の職員育成の覚悟を受講者は感じている
私自身がかつて研修を受講している際に感じたことなのですが、
受講者である職員は、講義中も講師に関心を向けていない気がしています。
むしろ後部席におられる園長先生の「組織づくり・人づくりの覚悟」を背中で感じている、もしくは探っているいる気がします。
「園長は真剣に組織と私たちの成長を見つめてくれているのか・・・」「どこまで真剣なのか?」
受講する職員は講師がどんな話をしようが、腰かけている園長の姿に、組織づくりへの覚悟と、受講する職員への想い・願いを感じとるのだと思います。
そして、その想いを感じ取った受講者は、きっと園長と共にあるべき組織づくりに参画してくれるものと考えています。
園長は、後部席でじっくりと腕でも組んでにらみを利かせておられることが大切です。
株式会社SKS代表。一般社団法人保育者人づくり協会代表。
全国約500ケ園での保育園・こども園の職員向け研修でのマネジメント講師。保育園の組織づくり人づくりのためのサポート。キャリアパス制度設計コンサルティングなどを担当。愛知県保育士等キャリアアップ研修マネジメント分野講師。奈良県保育士等キャリアアップ研修マネジメント分野講師。
株式会社SKSは保育園・幼稚園・認定こども園の
研修やコンサルティングを行っています。
園長先生の組織に関するお悩み解決のサポートをします。