保育園、こども園の園長先生、主任先生、リーダーなど、職員育成を担当されている先生向けに、
前回、前々回に引き続き、キャリアパス制度と処遇改善Ⅱについて取り上げたいと思います。

前回までの記事をまだ読んでいない方はこちらからご覧ください。

保育園・こども園におけるキャリアパス制度・処遇改善Ⅱとはいったい何?

保育園、こども園の園長先生、主任先生、リーダーなど、職員育成を担当されている先生向けに、「キャリアパス」について取り上げたいと思います。 誤解してませんか? キャ…

保育園・こども園におけるキャリアパス制度・処遇改善Ⅱとはいったい何?2

保育園、こども園の園長先生、主任先生、リーダーなど、職員育成を担当されている先生向けに、前回に引き続き、キャリアパス制度と処遇改善Ⅱについて取り上げたいと思いま…

これまでも述べた通り、キャリアパスは、

保育園・こども園側からは、職員の能力開発と人間的成長を図り、園が求める成果を実現していくための

「道具」です。

働く職員にとっては、自身の強みを活かし、園に貢献しながら能力開発と人間的成長を図り、自身のセカンドキャリアをも視野に捉えていくことができる「道具」です。

あくまで「道具」だということは、是非留め置いてください。

導入に際して検証する2つのステップ

園がキャリアパスを導入するに際して検証するステップですが、

ステップ1

職員の成長と園の質的向上のために具体的な取り組み導入しようと考えるか。

ステップ2

そのための方策として、キャリアパスを採用するのか。

この2つについて検討をすることです。

そして、上記のいずれも「する」と選択した場合に、キャリアパス制度を構築に進んでください。

くだらないと思われるかもしれませんが、この検証は是非行ってください。

これはどんなことでも同じですが、「最初から」そうそう上手く進むとは限らないからです。

当然のことですが、これまでやったこともないことを新たに導入して、すぐに上手くいく筈はありません。

もしかしたら今までの固定観念の呪縛から解き放たないといけないような壁にあたることもありますし、園長先生方がご理解されていても、職員が最初から積極的に進めていくということもあまり期待できないかもしれません。人はたとえそれが自分たちに「良い」ことをもたらすものであっても、現状維持バイアスがかかってしまう傾向にあるからです。

多くの方が、これまでかけてこなかった労力と不慣れなことを実行するというところで、まずは最初の壁にあたってしまいます。けれど、ここを乗り越えるには、まずは上記のステップを踏むことが肝要で、このことをしっかりと理解していないと、「何故こんな面倒なことをする必要があるのか・・・」となってしまい、時に中座してしまいかねません。ここは是非導入までに検証をされることをお勧めいたします。

キャリアパス制度は当初はアバウトなものでかまわない。

では、具体的にキャリアパスの制度設計構築に歩を進めていくわけですが、

「道具」つまり、キャリアパスの制度設計は最初はアバウトなものでいいのではないかと私は考えています。あれこれ思い悩んだところで実際運用してみないと課題は見えませんし、やはり動いてみないと課題なんて見えてこないからです。完璧なものを策定してから動き出そうとすると実は動けない。

そんなことより、まずはアバウトなものでも良いので運用してみることが重要です。走りながら修正するというのがキャリアパスにおいては「正解」だと考えています。

乱暴な言い方をすると「買ってきた」道具をちょこっと園に合うように修正する程度でいいと思います。

「道具づくり」からスタート(制度設計のための基礎資料を添付しています。)

私が実際に保育園・こども園様にお伺いして構築していく際の聞き取り資料を添付しています。

これですべて作成できるわけではありませんが、キャリアパス構築の基礎資料としてイメージできるかもしれません。

職位の設定、園において配置する専門職、マネジメント職並びにそれぞれに期待する役割や能力、そして園内において経験しておいてほしいこと、それぞれの職位において受講しておいてほしい研修などを一旦取りまとめるための基礎資料です。

(ダウンロード資料:ブログ/キャリアパス構築基礎資料)

処遇改善Ⅱのそれぞれの職位における支給金額などもアバウトで掲載しています。

最終的にはこれをもとに、園の組織図やそれぞれの職位における昇格のための要件、評価シート、そして全体図へと仕上げていくのですが、まずは一旦園長先生とおおよそのイメージを共有するために使用しています。なんとなくイメージを持っていただけるのではないかと思います。参考になさってみてください。

キャリアパスのおおよその制度設計が終わりましたら、次のステップへと進んでいきます。

次のステップ「道具の使い手への取説」

次は、

実際に道具を使う人に使い方や使用上の注意点を理解していただくということに着手します。

使用する人(=リーダー)が道具の使用目的や使用上の注意点を正しく理解して、使用できる最低限のスキルを身に付けておく必要があります。

またこの層に正しくご理解いただくことは、全職員が納得して歩みを始めていく上で非常に重要です。

メンバーはきっと??ですから、その不明点や漠然とした導入への不安感をリーダーメンバーに吐露すると思われます。

その時にリーダー自身が理解していないと不安感を増殖させてしまうことになりかねません。

まずは園の人づくりへの想いとキャリアパスとの牽連性を正しく伝達し、キャリアパスの正しい運用方法を伝授することが肝要です。

マネジメントの習得は園内研修が望ましい

そして使用上の基礎知識として必要になるのが、マネジメントの知識ということになります。

ここは是非時間をかけて学ぶ機会を提供してあげてください。

園内で時間をかけてリーダー研修などを実施しながら、浸透を図るというのが最も望ましいと思います。

どれだけ良い道具でも、使用する人がまずければ、周囲の人に危害を及ぼす危険性をはらんでいます。

キャリアパス制度には、メンバーの成長を上司が評価するというものも含みますので、リーダーの視点が根本的に誤ったものだと、人を傷つけてしまうことになりかねません。

保育園・こども園においては、「子どもたちの豊かな成長」という視点は皆さん重要なものという位置づけをしていますが、こと職員の成長にはやや意識が薄いということもしばしばです。

職員自身の成長も園の使命としては非常に重要なことなのだということも含め、皆さんで学ぶ機会を設けていただくことをお勧めいたします。

ここまでで、

キャリアパスの大まかな制度設計
制度を使用する人の育成
の2点が終了したとします。

では実際に運用していくということになります。

運用にあたって大切な「全職員への説明会」

運用にあたっては、園にお邪魔して、全職員にキャリアパスの制度を導入しますよという説明会を実施したりしますが、そのような場設定は必要だと思います。

また、実際の運用にあたっては、まずは初年度のそれぞれの職員へ付与する「職位(初年度は仮の職位になろうかと思います)」の設定と付与というステップが必要になります。

実際に運用サポートをしてみて感じる課題

そして説明会も無事終了し、それぞれの職員の仮職位の伝達も終了し、担当する専門職の配置も完了し、キャリアパス運用をスタートしていくのですが、よくよくある課題について述べておきたいと思います。

園の体制整備の課題解決を図りましょう。

キャリアパス制度を今年度からスタートさせましょうといって、では、「あなたは食育担当ね。あなたは安全管理担当ね」といってスタートしても、誰もが初めての経験です。

そもそも、

「食育担当って何をすれば良いの?」
「どうす進めて良いの?」
「何処が着地点(今年度のゴール)なの?」
かがわからないのです。

ですから、1年を経過して、年度末の3月頃の面談で「あなたは今年はどんなことに取り組みましたか?」と聞いたところで、「まあ何となく勉強しました」や「あまり何もできませんでした」となってしまう場合に出くわします。

せっかく構築して、勉強して、説明会までしたにも関わらず、これでは残念です。

そうなるとキャリアパス制度は本来の意図から離れ、ただの能力評価システムになってしまう・・・。つまり本質から外れてしまうということになります。

しかし・・・実はこのような場面が非常に多いのも事実です。

上に記載した3点のメンバーの疑問を誰かが担って、働きかけ、ヒントを提示し、進捗を確認しつつ、成果を発表する機会を提供していくという人がいないことが、大きな課題なのだなと感じています。

それぞれのキャリアをナビゲートしてくれる存在。そんな役割を担ってくれる人がいないことが原因の一つではないかと考えています。

しかし、多くの園では、ここがなかなかぴんとこないのだろうとも思います。

園長、主任とともに、

園の職員ひとりひとりのキャリアプランを聞き取り
園内においてどのような経験をどう踏んでいけばいいのかをイメージし
職員の職責に合わせて、何を為すべきかを指し示し
研修計画を個別に作成、提示し
学びの成果を発表・披露し、成長を実感できる環境を整えてあげる
という専門職を管理するリーダーの存在です。

人員に余剰などなく、かつ「保育」が業務ですから、たとえリーダーといえども、クラスから離れて、職員育成のためのリーダー設置というのは非常に課題も多いとは思いますが、クラスに配置されながらも、クラスマネジメントからは離れ、専門職をマネジメントするリーダーの設置と育成がカギだと感じます。

ここがこれまでの園の組織づくりからすると未知のエリアで、理解しづらい点ではないかとお察ししますが、敢えてここに人を配置する職員を養成し、本来の目的である職員の能力開発と人間的成長を図るということを図ってほしいと思います。

かつて出会ったことのないリーダー職ですが、このポジションに真摯に取り組んでいけば、きっとそのリーダーはマネジメントの要諦を掴んでいくことと思います。

そして、専門職のリーダーとともに園長・主任も加わりながら、園のメンバー全員の成長を計画的に図っていくことができると、得られる喜びは絶大です。

その意味で、保育園・こども園におけるキャリアパス制度というのは、園長や主任だけが理解しておけば良いという類のものでは当然ありませんし、リーダー層レベルまで理解しておけば良いという類のものでもないように感じています。

全職員に正しく共有し、浸透させ、全員で取り組んでいってこそ少しずつ運用のコツが見えてくる代物だと思います。

ここには根気が必要です。

遅々として進まないという場面もあるかもしれません。

しかし、園の質的向上と職員の成長を図るという意味においてキャリアパス制度は非常に優れた制度です。

職員の取り組みの歯車が回り出すまで、粘り強く進めていくことで、きっと人も組織も活性化させることができるものと考えます。

職員は見つめています。

職員は園が「私たちのことをどう考えてくれているのか」ということに非常に興味、関心を持っていると思います。同時に、園長の人づくり、組織づくりへの真剣さにも興味、関心を持っています。

その意味では、キャリアパスを処遇改善Ⅱを契機として是非前向きに取り組んでいかれることを強くお勧めいたしますし、一旦導入を決断されたら、少々のことでは中座しないでほしいと思います。

職員はその園長の姿勢を固唾をのんでみていると思います。

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