保育園、こども園の園長先生、主任先生、リーダーなど、職員育成を担当されている先生向けに、
引き続き、キャリアパス制度について取り上げたいと思います。
前回までの記事を読みたい方はこちらをご覧ください。
- 0.1. 1. 制度設計
- 0.1.1. 1 園内の組織はどのようなものにするか(組織図に書いてみる)
- 0.1.2. 2 どのような職位や専門職を配置するのか、その職務の役割はどんなことなのか、どんな権限を与えるのか。
- 0.1.3. 3 自己評価シート/上司評価シートを作成する。
- 0.1.4. 4 それぞれの職位において、どのような経験を積んでほしいのか。
- 0.1.5. 5 職位毎に履修しておいてほしい研修などを書き出します。
- 0.1.6. 6 処遇改善費を割り当ててみる。
- 0.1.7. 7 上記を表にしてみる。
- 0.1.8. 8 職員への概要説明の後、一度、自己評価・上司評価を実施されても良いと思います。
- 0.1.9. 9 仮職位と職責の決定と職員への伝達
- 0.1.10. 2. 職員への説明
- 0.2. 3. リーダーの育成
- 0.3. 4. 実際の運用
- 0.4. 5. 自己評価と上司評価、年度末のフィードバック面談、新年度職位の決定
- 1. キャリアパス制度は、「ルールブック」
キャリアパスに関してこれまで述べてきたことの繰り返しにはなりますが、
園においてキャリアパスを導入していく流れは、以下の通りです。
1. 制度設計
まずは制度設計を行います。
前回も申し上げたとおり、最初はアバウトなものでもいいと思います。
完成度を高めてから運用するとなるとかなりの時間を要し、そのうち力尽きます。ある程度作ってしまってからは、「走りながら」修正を加えていく方が現実的です。
(この方法でないととん挫確度がかなり上がると思われます。)
1 園内の組織はどのようなものにするか(組織図に書いてみる)
作成する際は、そのポストにどんな役割と責任を担わせるのかを念頭に検討して下さい。
役割もなく、責任も権限もない「ただの名前」にならないようにしましょう。
2 どのような職位や専門職を配置するのか、その職務の役割はどんなことなのか、どんな権限を与えるのか。
それぞれの職位毎に担ってほしい
・役割
・権限
・求めるスキル
・必要な研修など
を書き出します。
3 自己評価シート/上司評価シートを作成する。
園の理念や求める人物像等をもとに、社会性や組織性、専門性についてどんなスキルを求めているのか→何を評価するのかを明らかにする。
ここは結構ミソです。
職員側の目線で言うと、何をすれば認められるのかをこのシートを通して理解することになります。
ですからどこかの評価シートを持ってきて、そのまま流用するということはしないほうが良
いです。最初はたとえそうであっても、ここは後々園の仕様に作り変えるべきものと考えます。
4 それぞれの職位において、どのような経験を積んでほしいのか。
行事リーダーはこの時期に担当しておいてほしい。/クラスリーダーを経てから次のステップに進んでほしい等
5 職位毎に履修しておいてほしい研修などを書き出します。
新任研修、キャリアアップ研修等
6 処遇改善費を割り当ててみる。
ここは機会を見て私見を述べたいと思います。
7 上記を表にしてみる。
キャリアパスの全容図になります
8 職員への概要説明の後、一度、自己評価・上司評価を実施されても良いと思います。
9 仮職位と職責の決定と職員への伝達
2. 職員への説明
キャリアパスの制度設計構築が一通り完成した後、職員への説明会を実施してください。
ここは一部のリーダー職員だけではなく、全職員を対象にされることをお奨めします。
1 そもそもキャリアパス制度を園で導入するねらい、意図、意味。
2 キャリアパス制度の趣旨と内容
1回の説明で到底理解は及ばないと思いますが、
・キャリアパスは、キャリアアップ研修を受講したらもらえる手当のことという片面的ない解釈
・皆さん(働く職員)のやりがいと成長を願いつつ、園としてその成長をバックアップする制度だ
ということは理解してもらえればいいです。
3. リーダーの育成
(園長も含めたマネジメント理解とキャリアパスという道具の目的と使用上の注意点の把握)
ここも重要なテーマです。
リーダーメンバーをうまく巻き込んでの運用を図っていきましょう。
4. 実際の運用
定期的な面談機会を設けることが望ましいです。
園の「絵本」担当に任命されたものの・・・「とりあえず走っておいで」と言われたものの、一人で黙々とゴールもなくトレーニングしたところで・・・だと思います。
やはり、目指すべき大会があって、その大会でしかるべき成績を修めようという目標があってこそ、シャープなトレーニングができるのだと思います。
そしてそのためには、やはりコーチが必要です。
コーチを園で養成していくことも今後の課題になります。
さしあたり、園長・主任が面談を通して、定期的にアドバイスをしていくことが求められます。
5. 自己評価と上司評価、年度末のフィードバック面談、新年度職位の決定
年度末のフィードバック面談に向けての、振り返りのための自己評価と上司評価、そして新年度の職位の決定。
キャリアパス制度は、「ルールブック」
「人間の持つ感情のうちで最も強いものは、他人に認められることを渇望する気持ちである」
ウイリアム・ジェームスの言葉です。
人は、心のコップに自己重要感の水をなみなみと満たしていたい生き物です。
自己重要感というものは、「自己承認」と「他人からの承認」の2つで成り立っていると言われています。
また、人は誰もが成長したいと心の奥底では思っている筈。
自らが頑張って何かを乗り越えることができた・・・その先に成長と、何よりも自分で自分を信じて、胸を張って進んでいくことにつながるのだろうと思う。自分が自分に自信が持てて、自分を好きになるには、何か自らが自らに課した約束を果たしたことが、自信となり笑顔で闊歩できるのだと思っています。
子どもたちも、「大好きな先生に褒められたい!」だから逆上がりを練習して、できたところを見てもらおうと必死に頑張って努力する。
そして「できた!」時に先生に褒められて喜ぶとともに、自分が自らと約束したことを努力によって果たすことができたという喜びと、自信が笑顔にさせ、明日への希望に至るのだと思う。
つまりは、大好きな先生に認められようと頑張ることで、彼は、「他人からの承認」と「自
己承認」を同時に獲得していくのです。
このDNAはいくつになっても変わらない筈です。
心の奥底にきっとみんな持っているのです。
だから、組織の中で認められないというのは、もう悲しみでしかない。
やる気は各段に落ちます。
何を頑張れば、どう頑張れば認められるのか・・・。
とにかくあなたはダメ・・・では心は折れてしまいます。
キャリアパス制度にある、評価シートや制度設計の内容は、園であなたが何をすれば認められるのか?
そして、何をすれば昇級・昇格を果たしていくのか?白日のもとに晒された「ルールブック」です。
単にジャイアンの頭の中だけにルールがあって、全てをジャイアンが支配するのではなく、それがのび太であろうが、スネ夫であろうが、同じルールのもとで安心して野球をすることができるためのルールを明示したものです。
このルールブックがある限り、たとえジャイアンと雖も無下にすることはできません。
縁あって共に集った職員の人間的な成長を担っています。
もう少し違う表現で言うと、担うことができる。
ですからキャリアパスに言う「評価」は、「裁く」ものであってはならない。
目指すべき行先に向かう道のりにおいて、「今どこにいるのか」ということを理解し、「次、何をすればより目的地に近づけるのか?」を明らかにしていくものです。
そして何年後にふと後ろをふりかえると自分の登ってきた道にくっきりと轍が残っている・・・それこそが「キャリア・パス」です。
このルールブックを通して上司は上司としてメンバーを鏡にしながら自身の成長を見つめます。
メンバーは、上司からのアドバイスや映っている自分を頼りに、これからの高みを目指していきます。
仕事を通してみんながそれぞれの成長をみつめることができる「道具」がキャリアパスだと思います。
勇気をもって皆さんでより愛される園、そして一人ひとりのやりがいにつなげていってほしいと願っています。
株式会社SKS代表。一般社団法人保育者人づくり協会代表。
全国約500ケ園での保育園・こども園の職員向け研修でのマネジメント講師。保育園の組織づくり人づくりのためのサポート。キャリアパス制度設計コンサルティングなどを担当。愛知県保育士等キャリアアップ研修マネジメント分野講師。奈良県保育士等キャリアアップ研修マネジメント分野講師。
株式会社SKSは人材育成コンサルティングと能力開発研修で
保育施設の課題解決をサポートします。