保育園・こども園の「キャリアパス」と聞いてあなたはどんなことを思い浮かべますか。
「処遇改善のための研修ポイントでしょう?」と思った方もいるかもしれません。
処遇改善Ⅰは平成27年に始まった、保育士の賃金ベースアップを目的とした国の制度です。
そこにキャリアパス要件という言葉が登場して以降、
保育業界では「キャリアパス」をめぐって様々な意見が交わされています。
私は保育施設の人材育成コンサルタントとして、保育施設のキャリアパス制度の設計、運用などのお手伝いをさせていただいています。

園長先生方のお話をお伺いしていると、本当はいい仕組みであるのにも関わらず、誤解されている方が多いなと感じます。

今回は、保育園、こども園の経営者、園長先生、主任先生、職員育成を担当されている先生向けに、「キャリアパス」について解説します。

キャリアパスとは

そもそも「キャリアパス」とは何なのでしょうか。
「キャリアパス(Career Path)」の「キャリア」は「職歴」のことです。
「パス」は「道」を意味しています。

「キャリア」という言葉の語源は「轍(わだち)」なのだそうです。
雪道を馬車で走ってきて、ふと後ろを振り返ると自身が辿ってきた道(轍)を見ることができます。
これまで登ってきた道を踏まえ、振り返り、これから先歩むべき道を思い描くのです。

つまりキャリアパスは仕事における目標を定め、そこに向かって進んでいくための道筋を表しています。

自分の勤めている保育園(こども園)でどういった経験を積むのか、どのような能力を身につければ、目標とするキャリアに到達できるのかという指標が重要です。

これまでの保育園(こども園)は園長・主任、以下は全員同列の組織構造の園がほとんどでした。
そこには職位や役職はなく、働く職員にとって、将来目指すべきキャリアを描きにくいという課題がありました。
保育施設では園長や主任の席は限られているので、役職につける人はごく一部です。
仕事における目標のない状況で、決して楽ではない仕事をこなす毎日では働く意欲を維持することは困難です。

そこで、
園内のキャリアパスを構築し職員に提示して、職員のやりがいにつなげようという試みに加算をつける国の制度が始まりました。

それが処遇改善加算Ⅰ・Ⅱです。

処遇改善Ⅰのキャリアパス要件とは…?

このブログでは「キャリアパス」の解説に的を絞りたいので、処遇改善Ⅰの算定方法は扱いません。

処遇改善Ⅰには①基礎分、②賃金改善要件分、③キャリアパス要件分という3つの要件があり、それぞれの要件を満たした施設に対して加算がつきます。

この3つの要件の中に「③キャリアパス要件分」というものがあります。

内閣府の資料「施設型給付費等に係る処遇改善等加算I及び処遇改善等加算IIについて1/2」には

➂キャリアパス要件分(②の内数)
役職や職務内容等に応じた勤務条件・賃金体系の設定、資質向上の具体的な計画策定及び計画に沿った研修の実施又は研修機会の確保、職員への周知等が要件(満たさない場合、②から2%減)。

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/kaizen/kyufu_kasan1-2-1.pdf


とあります。

詳しく見てみましょう。

・役職や職務内容等に応じた

これまでは保育施設には園長・主任しか役職はありませんでした。
まず園内に役職を作り、職務内容を整理するところから始める必要があります。

・勤務条件・賃金体系の設定

職員は新しい役職に就き、プラスアルファの職務をしたら、賃金が上がって欲しいと思いますよね。
園として、勤務条件や賃金に反映する仕組みを作りましょう。

・資質向上の具体的な計画策定

園長からただ役職と職務内容を言い渡されただけでは、職員は困ってしまいますよね。
職務上必要な能力が身につくように園として計画を立てましょう。

・計画に沿った研修の実施又は研修機会の確保

職員が能力を身につけるために研修機会を確保しましょう。

・職員への周知

つまり、「キャリアパス要件分」とは園内にキャリアパスを整備するとつく加算です。

処遇改善Ⅱはキャリアパスがあること前提の制度

園内にキャリアパスの仕組みを整備し、職員が役職につき賃金改定を行ったら、
園としては職員に払う分のお金が必要ですよね。
ということで出てきたのが処遇改善Ⅱです。

内閣府の資料「施設型給付費等に係る処遇改善等加算I及び処遇改善等加算IIについて2/2」には
キャリアパスの仕組みを構築し、保育士等の処遇改善に取り組む施設・事業所に対して、 キャリアアップによる処遇改善に要する費用に係る公定価格上の加算を創設する。

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/faq/pdf/kaizen/kyufu_kasan1-2-2.pdf

とあります。

処遇改善Ⅱは園内にキャリアパス制度があることを前提とした加算です。

キャリアパスについての誤解

ここまで読んできて、

「あれれ?」と思った園長先生も多いのではないかと思います。

園内にキャリアパスの制度はないけれども、処遇改善Ⅰ・Ⅱの加算は受けている。
処遇改善Ⅱを受け取るための研修ポイントがキャリアアップ研修で、その制度がキャリアパスだ。
そう誤解されている保育園経営者の方が多いのも事実です。

園内にキャリアパスを整備する利点

ここまで、

「キャリアパス」の意味と
処遇改善I・Ⅱはキャリアパスの整備と運用を後押しする制度だということを確認しました。

園内にキャリアパスを整備し、正しく運用することで、

それぞれの職員の「強み」を活かした職員育成
職員の「やりがい」を創出

につながります。

国の制度や仕組みを活用して、職員一人ひとりの豊かな職業人生につなげたいですね。
このブログでは「保育園・こども園のキャリアパス」について今後も取り扱います。

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