新しい年度を迎えるにあたり、「主体的な保育園・こども園の運営」について、
ここしばらくずっと考えていたことを書きたいと思います。
一体何のために今の仕事をしているのか?
もう一年ほど前のことですが、コロナ禍で苦しむ中華料理店の店主の特集をNHKでやっているのを出張先のホテルでたまたま観ました。
30年前に中国から単身日本に渡り、東京都の台東区で場所を借り、中華料理店を開店。荒波に揉まれながらも、何とかここまでやってきたのだと。
しかし・・・コロナで客足は途絶えてしまいます。従業員の賃金の支払いに加え、店舗の賃貸料すらままならない状況で、画面は金策に走る店主の姿を映し出していました。
大家さんと家賃の減額交渉をする姿。
銀行に融資の相談に訪れる姿そんな姿を見るにつれ、他人ごとではない私は、食い入るように画面にしがみついていました。
女性店主の苦しそうな顔。
「もうお店を止めようかな」という言葉。
同時に、彼女の心の中の葛藤を映し出していきます。
やがて彼女が発したのは、
「こんな苦しいことを、一体、私は何のためにしているのだろう。」というものでした。
やがて中国から単身日本に来たときの初志を思い出し、苦しいながらも地域の人に支えられながら今日まで歩んだことを思いだして、「やっぱり私にはここ(お店)しかない」
「これからも本当の中華料理を日本の人に提供して、中華料理の美味しさを届けて、地域の人に恩返ししたい」そう笑顔で語る姿に勇気をもらいました。
円滑に事が流れている時は、そんなこと考えもしないことです。
しかし・・・こと何かが起きた時に突き付けられる壁。そして、この基軸をもった人は強いと思う。
ブレずに自身の為すべきことをたとえ何が目の前に訪れても乗り越えていくのだと思います。
「一体何のために今の仕事をしているのか?」
「何のために」「誰のだめに」この仕事をするのか?
この園を通して、何をなそうとするのか・・・。
その「軸」を見出し、自分の中に持つことで、より歩むべき道がはっきりと見えてくるのだと思います。
園運営を考える
敬愛する野村克也氏の著書「野村の教え方」に、
「考える力は、『~とは』を問いかけることで磨かれる」という一節があります。
「人間とは」「社会人とは」「仕事とはという根本や、「営業とは」「経理とは」「人事とは」という各論に至るまで、「~とは」を考えることが大切だと。さらに、
「~とは」を考えない人間は、「このくらいでいいだろう」で行っていると。
まさにそうだなと思います。
「来年度の入園予定の子どもが少ない」
「定員を割ってのスタートになる」
「なかなか良い職員が集まらない」
「リーダーが育たない」
「いくら指示を出しても話を聞かない職員に困っている」
「子どもが減って、この先子ども施設はどうなるのか」
「職員が精神的に不安定になり休職した。困ったものだ。」
「保護者との関係に悩んでいる。最近の保護者は・・・」等々。
園長先生は、日々様々な課題と直面しながら園運営をされておられると思います。
どうしても、目の前の「緊急かつ重要なこと」や「緊急だけれど重要ではないこと」に忙殺されてしまい、
「緊急ではないが重要なこと」に手が廻らないことが往々にしてあるのではないかと思われます。
「7つの習慣」から保育園・こども園運営を考えると
「7つの習慣」でスティーブン.R.コヴイーは、この「緊急ではないが重要なこと」を第二領域と定義して、
人生を充実させるには、この第二領域により多くの時間を割くことが重要だと述べています。
わかっているつもりでも、つい後回しにしてしまいがちなこのことに時間を割くことが、非常に重要な局面に来ていると思われます。
「この園を通して、誰にどのような価値や幸せを提供するのか」
「直接の利用者に対しては」
「ここに集う働く職員には」
「これから保育を志す学生には」
そして、何より「園の社会における存在意義とは?何か」
全ての人にとって、「「うちの園でなければならない」私たちなりのものは何か」
を是非問いかけてほしいと思っています。
そのことで、
施設の存亡の危機に瀕したとき、
職員やリーダーをどう育成するのかという指針に直面した時、
この先の子ども施設のあり方と、そこに向けて取るべき施策について、
何より、これまでの園の歴史を踏まえ、先人の想いを後世に継承することの意味は何か、
という総論的な部分から、
「このことについての園の方針は?」と保護者から問いかけられた際の対応まで、
回答を見出すことができると思います。
年度末にそんな忙しいことができる筈もないと仰るかもしれませんが、
ここを避けて通ってしまわれるが故に右往左往してしまったり、確信をもって運営にあたれないという事
例に数多くお出会いします。
「7つの習慣」の第一の習慣は「主体的であること」です。
「主体的である」とは、「人間として、自分の人生に対する責任をとること」と本著の中で定義されていま
す。自分の人生の主役は自分であり、どんな人生にするかを決めるのは自分以外の誰でもないと。
これを組織や園に当てはめて読み返すこともできるかと思います。
どのような時代がこようとも、周囲の動向に右顧左眄することなく、「主体的に」自らの園を運営していって
ほしいと願ってやみません。
確かに七面倒で、つかみどころのないことかもしれませんが、どう考えても大切なことだと思います。
是非、新しい年度、たとえ一年かかっても、是非主要なメンバーと考える機会を作ってみてほしいと強くお勧めします。
株式会社SKS代表。一般社団法人保育者人づくり協会代表。
全国約500ケ園での保育園・こども園の職員向け研修でのマネジメント講師。保育園の組織づくり人づくりのためのサポート。キャリアパス制度設計コンサルティングなどを担当。愛知県保育士等キャリアアップ研修マネジメント分野講師。奈良県保育士等キャリアアップ研修マネジメント分野講師。
株式会社SKSは保育園・幼稚園・認定こども園の
研修やコンサルティングを行っています。
園長先生の組織に関するお悩み解決のサポートをします。