今年も新しい年度が始まり、早や一ヶ月を経ようとしています。

この時期は、既存の職員も担当クラスが変わり、新入園の子どもたちの受け入れなど、新しい子どもたちとの関係、新しい保護者の方との関わり…と保育者の方にとっては非常に大変な時期ですよね。

同時に、新しく職員を採用された園や、入職して同じクラスに新任職員を迎えた職員にとっては、その新任職員指導も並行して行うことになりますから、その負担の重さは想像に難くありません。

例年ですと大型連休が明け、6月の声を聞く頃に少しずつ新任保育者への愚痴?や、退職の話が舞い込んできます。

私はそもそも新任保育者の育成・指導が本当の意味で「上手くいく」こと自体ある意味で奇跡だと思っています。

新任保育者育成が上手くいくはずがない理由のほんの思いつくままに記載してみます。

保育園で新任育成が上手くいかない理由

(構造的な問題)

1.園の職員の中で、指導する職員との世代格差が最大なこと。

指導側の「普通」と指導を受ける側の「普通」に大きな格差がある。

2.園のすべての職員の目が、入職した新任保育者に注がれる。

入職者がひとりの場合は、全職員の目がひとりに集中する。複数の場合は比較の対象となる。

(新任保育者側の問題)

3.新任職員自身が未熟。(あたり前のこと)

20歳・22歳で社会人としての常識や、仕事への意識などを持っている方がすごい。

就職活動で揉まれたことがない新任保育者は一般企業入職社に比べても特に脆弱で、自分を振り返

り、社会人として成長する機会を奪われているが故、脆弱な状態で入職する以外にない。

(指導側の問題)

4.園で統一した職員指導の指針がない。

人によって指導する観点が違うことから、指導職員自身が自信をもって指導できない。

指導による自身の責任を回避したい→指導に関わりたくないという意識から指導がおざなりになる。

  ・指導保育者側に、指導する内容が「言語化できていない。」(指導力の欠如)

  ・指導保育者側の未熟。仕事観の未確立、マネジメント知識の不足など。

  ざっと思いつくことを列挙しただけでもこれだけあります。

  特に、「4.園で統一した職員指導についての指針」の不在こそが、新任保育士の育成が上手くいかない根本的な問題だと言えます。

  園において職員指導がなかなかうまくいかず、離職者が尽きないという状態が慢性的に発生しているのでしたら、まずは「足元」から見直す必要があります。

  そして、職員指導が上手くいかない傾向のある園の特徴として私自身が感じるのは、

  1. 「未熟な新任保育者を「指導してあげる」というスタンスで指導する園(職員)」と、
  2. 「何よりも子どもたちのことを一番に考える園」

  です。

新任保育者の受け入れや指導が上手くいかない理由は、「新任保育者側」だけにその責めがあるわけではなく、「受け入れ側」にこそ大きな要因があるのです。

このことをまずはしっかりと受け止め、園内組織を点検し、改善行動を図っていくべきです。

(新任と先輩職員もしくは園では、影響力は当然既存職員や園側の方が強いため)さらに上述のとおり、新任職員受け入れは、園の職員指導の指針を統一したり、先輩職員自身の仕事観やマネジメント知識を習得・整理する絶好の機会です。

にもかかわらず、いつまでも「新任職員側」だけにその責めを求めている限り、その園は新任職員を毎年どれだけ受け入れても、きっと「上手くはいかない」でしょう。

さらに、「何よりも子どもたちの為に・・・」を標榜する園は、質の高い保育を提供しようとするあまり、未熟な保育者が成長する機会を奪う傾向にあるように感じています。

「任せられないから任せない(補助しかさせない)」→「新任職員のやる気を削いでしまう」→「モチベーションが低下する」→「退職してしまう」→「指導職員側が疲弊する」→さらに「新しい職員を採用する」→「また任せられない」→・・・「保育の質が低下する」

という負のループに迷い込んでしまうのです。

保育園・こども園は、子どもたちの為だけにあるのではなく職員のためにも存在するということをしっかりと理解していかないといけない理由は実はここにあるのです。

新任職員育成を円滑に行い、本当に育てたいのなら、

自園の保育の質を本当に高めたいのなら、

  ・「指導してあげる」という上から目線での指導は避ける。

  ・新任保育者のおかれた状況を理解する。

  ・指導者側にも問題があることに気付く。

  ・新任職員の育成を一つの機会と捉えて、園内の保育のあり方や指導の在り方について振り返る。

ということが重要です。

「共に成長しよう(私たちもこれを機会に学ぼう)」と「同じ目線で」指導者側が新任職員と向き合うことで発展的な関係性を構築することにつながると考えます。

これが保育園・こども園における「新任職員育成はじめの一歩」です。

株式会社SKSは人材育成コンサルティングと能力開発研修で
保育施設の課題解決をサポートします。