皆さん、あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年は、これはあくまで私の肌感覚に過ぎませんが、

「保育園・こども園での職員指導」について言えば、なんとなくこれまでのやり方では通用しなくなってきたように感じる一年でした。

保育者の採用難とせっかく採用しても定着させることが難しかったり、中堅層の離職が後を絶たないということをよく耳にしたように思います。

本年も、園内研修などを通して感じたことをブログにしたためていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

「何のために仕事をするのか?」「チームは何を目指すのか。」

園における「ビジョン」や「理念」と「職員の人間的成長を見つめること」の大切さ。

新しい一年の始まりに「今年の目標」を立てられた方も多いと思います。

私の場合、せっかく立案したものの、3ヶ月後には大体忘れ去ってしまい、一年を終える頃には、もはやその目標自体忘れてしまっているというのが例年の有様です。

それでも性懲りも無く、また新しい年に「目標」を立てます。

それはきっと、人が持つ「成長への根源的な欲求」のなせる業ではないかと勝手に推察します。

誰もが、「今よりももっと成長したい」「もっとよくなりたい」。すこし大仰な言い方をすれば、「自身の人生を謳歌したい」「胸を張って人生を歩みたい」と願っているのだと思います。

しかし・・・既に自白したとおり、自分だけでそれを為すのはきっと難しい。

だからこそ「チーム」で同じ目標を追いかけ、「チームの夢」を自身の「夢や目標」と重ね合わせて追いかけることにこそ「チームに所属すること」の意味があるように思っています。

チームとして目指す魅力的なビジョンや目標がそのチームに自身が身を置く「意味」となり、その目標を追いかける過程で自身の成長を実感出来るとき、人は「やりがい」や「自信」へと向かうのだと思います。

これは何も学生だけではなく、きっと社会人も同じことです。

組織として目指す姿や仕事をする意味こそが、その組織に所属する意味や所属できる誇りにつながり、仕事を通して自身の成長やチームの成長と重ね合わせることができた時に、人はその組織への帰属意識や仕事への誇りへと繋げていくことができるのだと思います。

そして、ここに“お飾りやお題目ではない”「理念」や「ビジョン」の重要な意味があります。

まずは、目指すもの。チームとして目指す魅力的な世界を提供できているかどうか。

そもそも「ない」のであれば、また、残念ながら「お題目」になってしまっているのであれば、まずは、明文化することを強くお勧めします。

保育士3年・5年の壁は、「私、このままでいいのか?」という心の叫びが顕在化したもの

前回のブログでも少し触れましたが、「保育士3年・5年の壁」と言われるものは、この「組織として目指すビジョンや理念の不在」というのが大きな要因だと私自身は考えています。

保育者を目指して園に就職する際は、「子どもが好き」や「こんな保育がしたい」という動機で入職し、「何より子どもたちのことを第一」に「目の前の子どもたちのため」にと思い勤しんできたものの、ふと数年経って立ち止まって振り返ってみると、「何かが物足りない・・・」

確かに子どもたちの成長は仕事のやりがいに繋がっているように感じる。けれど・・・

「私自身の成長につながっているという実感」が得られない。そんな消化しきれない「得たいの知れない何か」に苛まれるのではないかと推察します。

「もっと自分を活かせる場が他にあるのではないか」がこの保育士の壁を生み出していると思えるのです。

「」で身を削ってきたけれど・・・「私は」本当にこれで良いのか。

そして、それを「感じ始めた」職員が違う世界へと羽ばたいていってしまう。

それは、今の「巣」では自分を活かし切れていないという心の叫びが「巣立ち」を決意させているのです。

今の「巣」でが満たされるなら、今までの経験や組織内での序列などを投げうってまで、わざわざ「巣立つ必要性」などない筈だからです。

これから来る未知の世界へ「安定」を捨ててでも飛び立つには、そんな心の葛藤が故ではないかと思えてなりません。誰だって転職などしたく無いはずです。

「自分を活かしたい」

「何より子どもたちのことを一番に」という言葉は、確かに反論の余地のない言葉。しかし、「その言葉だけ」では若い保育者のモチベーションを維持し、組織にとどまらせることは難しい。

保育園・こども園では、

「何より子どもたちのことを一番に」という言葉をよく耳にします。

(言い方を間違えて、これを否定したと捉えられてしまうと、とんでもない人だと言われそうです。)

そして子どもたちの成長を第一に考えることで、結果私たちのやりがいや成長に繋がっていく。だからこそ、何より「子どもたちのことを第一に」考えることが重要なのだと。

「確かに反論の余地のない言葉」で一見「正解」のように聞こえるのですが、職員からすると、なんとなく自身の成長は二の次のような感じがするのも然りです。

加えて、残念ながら「その言葉」では何も今の「巣」にいる意味を見い出すことができません。

他の園に行っても「感じることができるもの」だからです。

さらに「自分を活かしたい」「自分が活かせる場所で働きたい」と渇望する職員にとっては、その言葉だけで組織や業界にとどまらせることは難しいと言えます。

いくら大切な子どもたちのためとは言え、自身の成長の機会を奪われる必要はありません。

働く職員に提供する「価値」とは何か。そしてこの組織に所属する「意味」は何かを明示する必要がある。

元帝京大学ラグビー部監督の岩出雅之氏の著書「常勝集団のプリンシプル」には、

「帝京大学がまだ勝てなかった時期は、ラグビーに関わる運動能力とスキルだけを引き上げようとしていて、学生のマインドへのアプローチという最も大切なことを忘れていた」という一文があります。

また、

「部員が信頼されて、そして幸せに人生を生きていけるように大学4年間ラグビーを通して人間的に成長してもらうことを目標に取り組んだ結果、チームワークが良くなり、ラグビーも強くなるという好循環が生まれた」とも。さらに、

「帝京大学がまだ勝てなかった時期は、ラグビーに関わる運動能力とスキルだけを引き上げようとしていて、学生のマインドへのアプローチという最も大切なことを忘れていたのです。」 

(岩出雅之氏著「常勝集団のプリンシプル」より抜粋)

「勝利のために、ラグビーに関わる運動能力とスキル」と「子どもたちのために、保育に関わる専門的知識とスキル」という言葉はリンクします。

もちろん「それも」大切です。しかし、何より、

「職員が社会で信頼されて、幸せに人生を生きていけるように、保育を通して人間的に成長してもらうことを目標に取り組んだ結果、チームワークが良くなり、保育の質も向上するという好循環」へと誘うことこそが重要です。

職員のモチベーションの低下や、定着しない要因は、何も「保育者側」の問題だけではなく、実はこんなところにも潜んでいるのです。

それを「子どもたちのために」という一文だけですべてを浄化させようとすること自体無理になってきてるのではないでしょうか。時代と共に人も変わっていきます。「あるべき論」ではなく、時代の変化に伴って私たち自身も変わっていかなければならないのではないでしょうか。

是非、園の理念やビジョン、職員育成について検証されることをお勧めいたします。

年賀状イラストをイラストレーターのくすはらくうさんに描いていただきました。

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