保育士が指示待ちになってしまう理由

過去に受講したマネジメント研修での資料の一節です。

出典がどこだったのか、講師の言葉だったかすら失念してしまったのですが、

凡庸なマネジャーは、

期待を示すときには、「期待する行動そのもの」を「微に入り細にわたって定める」。

指導するときには、とりわけ「その行動にとりくむよう言い渡し」「習慣になるまで練習させる」。

要は、マネジメントを「型にはめる仕事」、「与えられた役割を完璧にこなす」ように部下一人ひとりを「作りかえる仕事」と信じている。

優れたマネジャーは、全く逆のことをする。

「部下一人ひとりの特色を発見し、それを有効に活用すること」である・・・という内容でした。

その言葉に衝撃を受けたことを今もありありと憶えています。

まさに私は凡庸なリーダーの典型だったからです。

私は、リーダー(マネジャー)の仕事とは、こうしろと指示を出し、その指示通りに部下が動くよう、部下を作りかえることだと信じて疑わなかったからです。

そんなリーダー(マネジャー)の下では、どんな部下も“楽しい”はずはありません。

指示に従わなければ、叱責され、罵倒されてしまうからです。

そんなリーダーの下で職員が成長する筈などありません。

そんなリーダーにとっては、すべてのことにお伺いを立ててくれ、指示通り動いてくれる部下が「良い部下」なのです。それでは自分で考えて行動する意欲をもった職員は育ちません。

こうして指示待ちの職員だけが認められる風土を醸成していってしまうのです。

マネジメントするリーダーが新人職員の考える余地を奪っている

保育園・こども園のリーダーは一般企業のリーダーよりも、こういった職場風土を作ってしまう危険性が多くあります。

微に入り細に亘って指導し、その指示に従わなければ叱責するマネジメントスタイルの下では、指示待ち職員しか育ちようがありません。

にも関わらず我々リーダー側は新任職員を指して「言ったことしかしない」「自分で考えて行動できない」

といって嘆くのです。

これは悲劇です。

マネジャ-が部下の考える余地を奪い、隅々にいたるまで指示に従うことを要求するが故に、指示待ち職員を育成してしまっているのです。さらに悪いことに、指導を受ける職員は、仕事に楽しさを見い出すことも、やる気を喚起されることもなく、モチベーションを下げていくのです。

かつての私はこの典型です。

知らず知らずのうちに人を傷つけ、失意のうちに退職させてしまっていた筈です。

保育園・こども園で新任職員指導を担うリーダーの方々の中にも、心当たりのある方は実は多いのではないでしょうか。

企業に比べてマネジメントという学問領域が浸透してこなかった子ども施設の方が、傾向としては私のようなリーダーが育つ土壌は十分あるように想像します。

人はみな未熟で不完全な生き物

私たちは、よく新任職員の未熟さや不完全さを指摘します。しかし、それは何も新任だけに言えることではなく、経験を積んだ私たちとて、きっと同じなのです。

そもそも人は未熟で不完全な生き物。それを、さも自分たちは完全で、新任職員は不完全だから、私たちの「域」に早く到達すべきだと、新任職員だけに変わるようしむけてしまいます。

今の状況を生んでいる根本原因は、実は自分たちマネジャーにも非があるかもしれないと、振り返ることが重要なのです。

そんなリーダーとて、部下を傷つけ、やる気を失わせたいなどと思っていない筈です。
むしろ尊敬されるリーダーとして成長したいと心から願っているはずです。

だからこそ真摯に自身を振り返ることが必要なのです。

真摯に自身を振り返り、マネジメントを学ぶことが重要

ここにマネジメントを正しく学ぶ意味があるのです。

部下は上司の鏡です。

指示したことしか出来ないのは、そんなマネジメントをリーダーがしているからこそです。

自分で考えることをしないのは、そんなマネジメントをリーダーがしているからこそです。

そう考えると、正しくマネジメントの原理原則を学び、自分を振り返り、自身の周囲に与える影響をつかみつつ、自らの関わり方を変えていくことができます。

よく「私なんてまだまだで、指導できる人間ではない」という人がいますが、実はそんな人ほど、後輩指導に携わった方が良いのです。

後輩育成を通して、私たちリーダーも自身の行動を振り返り、成長していくのです。

リーダーに求められる資質

P.Fドラッカーは、著書の中で、リーダーに求める資質として「真摯さ」を挙げています。

どうしてドラッカーが真摯さが必要と語ったのか、知識の浅い私にはその本質的な意味まで理解が及ばないのですが、

リーダーとして自身の仕事と向き合い、関わるメンバーの人間的成長を見つめ、自身を振り返る・・・この場面だけを取り上げても、真摯さが非常に重要だと理解できるのではないでしょうか。

リーダーは、多くのメンバ-に少なからず影響を与える存在であるということを心に留めて、日々メンバーと関わるようにしてみてください。

きっと、それがリーダー自身の成長と自信につながっていくこととだと思います。

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