ある園の園内研修でのひとコマから

先日、ある園の園内研修(対象は園長・主任・副主任などの幹部職員)で、「園の現在抱える課題」について話し合いをしてもらいました。

特に職員育成にテーマを絞ったわけではなかったのですが、大半が職員育成についての課題でした。

一部、板書内容をご紹介します。

・仕事(保育)への意識の差が低いように感じる。

 何が楽しくて仕事をしに来ているのかと・・・え?プライベートの充実だけ??

・クラスを任せられない。

 若手職員は休憩を取っている。リーダーは任せられないから休憩を取れない現状がある。

 若手はその状況を知りつつ頑張ろうとしない。このままでは、リーダーが不満を募らせる気がする。

・一緒に子どもたちを見ることができていない。

 職員間のコミュニケーションの問題なのか?

リーダーが上手く指導して、任せることができていない側面があるのか?

・日々の業務がルーティンワーク化していて、消化しているだけのように見える。

 毎日同じおもちゃや遊具で遊ばせている・・・子どもたちは辛抱強いなあと感心する。

 保育が発展していかない。

・子どものケガについて、状況を見ているのと見ていないのとでは大きな違いがある筈。

 保護者にも説明しないといけないが・・・見ようとしていない。

・リーダーに頼りっきりで全く責任感がないように見える。

・あまりに大丈夫そうでないので「大丈夫?」と声をかけても「大丈夫です」との返答。

 「いやいや大丈夫じゃないでしょ!」と言いたくなる。

・仕事は「消化するもの」、「言われたことをただすること」と思っているように感じる。

・掃除の仕方・・・そこから指導?指摘すると舌打ちが聞こえそう。

・期限守らない?守れない?整理整頓ができない・・・

等々、枚挙に暇がない状況で、だんだんと収集がつかなくなってしまっていました。

具体的な職員指導の悩みとして

その中で、具体的な職員指導の悩みとして出てきたものを列挙しますと、

・育成といっても、「できないけれど任せて育てる」か、「できるように育成してから任せるのか」・・・。

 任せないと育たないとは思いつつ、任せても結果が見えているので、任せる勇気が出ない。

・職員指導で、日々話していることが果たしてどこまで伝わっているのか・・・。この「意識」を高めるにはどうすれば良いのかが全くわからない。

という、悩みなのか、悲鳴なのか、失望なのかわからない有様でした。

実は、同じような課題、悲鳴をお持ちの先生方も多いのではないでしょうか。

褒めて認めて育てろと言われても・・・

厳しく指導などしてしまうと、メンタルにまで影響を与えてしまわれても困るし、だからと言って、上げ膳据え膳で褒めて認めて育てたところで「木に登って降りてこない」。

そしていつしか、「頑張っても頑張らなくても同じ」「頑張った者損」のような職場になってしまっていると・・・。

そうなると、当初やる気を持って一生懸命頑張っていた職員のモチベーションまで下げてしまいかねない。そして、そんな職員がやる気を失い、退職していくようになってしまうと本末転倒だ・・・というお話が出てきていました。

まさにその通りだと思います。

「どちらを選ぶか」という議論が正しいのか、誤っているのかはともかく、間違いなくどちらを残したいですか?と問えば、皆さん「やる気のある職員にこそ残ってほしい」はずです。

頑張っても頑張らなくても「良い」のなら、大勢は「水も人も低いところに流れ」ます。

では、この「負のスパイラル」から抜け出すにはどうすれば良いのでしょうか。

疲弊し、自信をなくすリーダー職員

上記の課題をどう解決しますか?と話を振るのですが、実のところ出てくる音は「溜息」ばかりでした。

幹部職員が肩を落とし、「もはや私の意識を下げるしかないのかもしれないと思ったりしています」という声まで出る状況です。何か、トップさえも今の状況をどう捉え、何から手を付ければ良いのか・・・お手上げなのかもしれないと感じました。

負のスパイラルからの脱却のためには。

じっくり話し合いを進めるうち、「やる気のない人に辞めてくれということではなく、やる気のない職員が「居づらい職場づくり」をしないといけない」という前向きな意見が出始めました。

一生懸命頑張っている職員が報われ、認められ、より活躍できる役割を付与され、権限と責任を与えられて、活躍できるフィールドを広げ、成長できることを支援するような職場づくりに転換していかないといけないと。

そうして、自分たち(園長・主任・副主任)も自信と誇りの持てる職場づくりにしていかないといけないと。

キャリアパスの「活用」は保育者育成の課題解決の有効な回答になり得る

では、どうすれば良いか。

何から手をつければ良いか・・・が次なる大きな課題ですね。

方策についての「正解」は当然初めから用意されていませんし、正解に到達するにはたくさんのルートがあるとも思います。

ただ、キャリアパスの構築と「運用」は、上記の課題解決の一つの有益な回答になり得ると私自身は思っています。

(キャリアパスについての詳細は別の章で改めて解説します。)

園でキャリアパス制度を導入することで、以下のことを実現することができます。

・職員が自分らしく活躍できるフィールドを園が提供できます。

・一人ひとりの職員に期待する役割を知覚させることが可能です。

・仕事の振り返りとフィードバック面談、資格取得支援などを通して、職員の「成長実感」とそれぞれの職員の強みが発揮できる職場風土につなげることが期待できま 

 す。

・一人ひとりの職員が、園における自身の居場所(役割)づくりに寄与します。

・保育者としての「やりがい」の創出を図ることができます。保育を通して人間的成長を図ることにつなげることが可能です。

キャリアパスとは、本来、職員の自律的成長を促すための制度です。

保育所・こども園は国が推奨するかたちで先導していますが、園で実際に運用できているところは非常に少ないのが現状です。是非前向きに取り組まれることを強くお勧めします。

ただし、キャリアパス導入と活用には「少し高い山」に登るための「知識」と「装備」と「体力」が必要になります。

つまり、

①      キャリアパスという制度の「正しい理解」(知識)

②      キャリアパス制度を運用するためのマネジメントの習得(装備)

③      実際に「継続的に運用」する力(体力)

です。

キャリアパス導入と運用にもそれなりの装備や知識が必要ですが、それでも、日々出口の見えない暗いトンネルをひたひたと歩むより、私はずっと健康的で希望の見えるものだと思います。

上記の3つさえ着実に備えるようにすれば、必ず道は開けます。

キャリアパスを正しく運用できるように今一度見つめ直しませんか

キャリアパスを単なる「キャリアアップ研修の履修」と「手当の分配」だと捉えず、正しく運用することで、園の未来を拓いていくことこそが、園長先生方にとって、誇りある仕事に繋がっていくものと私は信じています。キャリアパスを正しく理解し、園の考えに沿った制度を整え、働く職員の成長とやりがいの創出を図り、保育の質的向上という明るい園の未来を共に描いていきませんか。

株式会社SKSは人材育成コンサルティングと能力開発研修で
保育施設の課題解決をサポートします。