令和6年4月にリーダー対象の園内研修会を実施しました。今回は、その内容と参加者からのアンケート結果について掲載します。

園内でのリーダー研修導入の参考になれば幸いです。

【今回の園内研修の概要】

 ■対象園:これまでお付き合いのなかった新規園

 ■ご導入のきっかけ:

 以前私が実施した「保育士等キャリアアップ研修(マネジメント分野)」に参加された方

 (法人幹部)から、受講したマネジメント研修を園内のリーダー層対象に実施したいとご

 依頼いただく。

 年度の初めにあたって、あらためてリーダーとして、主に後輩指導を重点に置いたものを所望。

 いきなり年間を通じたリーダー研修というのはハードルが高いので、まずは終日研修

 (10:00~17:00)でお願いしたいとのご要望。

 ■園訪問にて課題の聞き取り:

 園にお伺いし、園長先生、主任先生方と園の課題についてお伺いしました。

 リーダー層が新任・若手の後輩職員への対処に悩んでいる。厳しく指導するとパワハラだと捉えら

 れかねない…。

 また、自身よりも年配のパート勤務の保育者へも、リーダーとしてどう接すれば良いかに戸惑いが

 ある。園長・主任からリーダーを観た際、リーダーの指導にも問題を感じる。そのあたりを重点的

 に研修実施してほしいとのご要望がありました。

 ■研修内容のご提案:

 お話を受け、以下のとおりの内容を提示しました。

 ■研修会の目的:

 リーダーとしての在り方を正しく理解し「リーダーに向いていない。自信がない」から

 「リーダーとして頑張ってみよう」へ転換すること。

内容

リーダーの役割理解/「後輩指導」が上手くいかない根本的な原因を知る/園内でのコミュニケーションの図り方の理解/後輩指導の原理原則を身に付ける/仕事と人の成長の関係についての理解/信頼される人として成長していく上で大切なこと

 

 ■研修受講に際して当方からお願いしたこと

  受講に際して、自身の中で「目標」を事前に考えてご参加いただくこと。

  (目標についてはお伺いはしませんので、ご自身の中で考えて臨んでください。)

  質問・意見、「こんな時どうすれば良いの?」は「いつでも」してほしいこと。

  皆さんが疑問に思うことは、他の誰かも疑問に思っています。代表して聞くくらいの気持ちで臨んでほしいこと。

 リーダー対象研修会のながれ 【概要】

 10:00~10:30 「研修をはじめるにあたって」

  □研修会とは □研修受講姿勢について 

  □パラダイムシフト□問題意識の深度 

  □変化を楽しむ風土づくり □能力は開発するもの

 10:30~11:00 テーマ「マネジメント(=リーダーの仕事)とは何か」

  □他園事例 □「最近の若い子」について

  □マネジメントとは何?

   どうして必要なの?―キャリアアップ研修に「マネジメントが入っている意味」

 11:10~12:10 テーマ「リーダーの役割」(討議と解説)

  □映画「火天の城」からリーダーの役割を考える 

  □そもそもリーダーは「何を求められているか」 

  □園長・主任と現場の考えにズレを感じる理由。

  □リーダーの役割(園長/主任/リーダーの役割)

  □園の中におけるリーダーのコミュニケーションの図り方

 (昼食休憩)

 13:00~15:00 「個人研究とグループ討議」と解説

 グループ討議のテーマ

  □OJT(仕事をしながらの職員育成)

  □仕事の任せ方 

  □コミュニケーションで大切なこと 

  □リーダーが後輩指導についての捉え方 

  □リーダーシップについて(私はリーダーに向いていない人へ)

  □動機付け(人をやる気にさせるには)

 16:10~17:00「仕事と人の成長の関係」

  □「チームワークの基本構図」 

  □「信頼されるリーダー」を通して

   「信頼される人へ」と成長してほしい。

 研修終了後 参加職員からアンケートを取りました。結果は以下のとおりです。

 参加者職員アンケート

Q1:研修会に参加しての感想をお聞かせください

このような内容の研修に初めて参加し、とてもわかりやすく説明していただいたと思う。年数を重ねて先輩となったが、先輩・リーダーとしての心がまえや立ちふるまいを習っていなかったので、考え方や見られ方を知ることができて本当に良かった。今後の仕事に活かしていきたい。

ただ漠然とリーダーになるのではなくしっかりと言葉にしていただけたことで、自分の中でも納得できることが多くありました。自分なりの「リーダー」になれるように考えていきたいです。

今までリーダーという意識をあまり持たずに過ごしてしまっていました。また、物事をあまり深く考えていない所があったと反省しました先輩方の声の掛け方や思想・・・を見習いつつ自分のやり方で行っていこうと思いました。

先輩方の配慮等が改めて分かった。

会議などで、いつも同じ人ばかりが発言しており、発言しない人達に対してもどかしさを感じていたり、そうさせてしまっているのは自分なのかについて考えていたところ、今 回の研修では先生自らいろんな人に意見を求めたりする場面があり、とても新鮮でした。

意見があってもなくても発言を求め、受け身ではなく、みんなが参加し、特に討論においては、それぞれの意見に対し、みんなで耳を傾け考えたり話し合ったりする時間がとても有意義で、私達もこのように会議ができたらもっと良くなると感じました。

Q2:研修会で一番印象に残っている内容 役に立った内容はどのようなものですか。

テキストP34の「能力は開発するもの」という所。

自分には合わない、やりにくいという思いばかりを持つのではなく、自分も合わせる。変わったことを理解する努力をしていきたい。

リーダーに向き、不向きは存在しないこと。・仕事の任せ方・環境を良くするだけではなく、目標を持つことが大切である。・「つもりの自分」と「周りから映っている自分」とそのズレについて。

コミュニケーションは意思疎通であり、必要なのは解答ではなく、言葉をそのまま受け止める応答であること。

コミュニケーションにおいては、聴くことが大切である。言葉の裏にある相手の想いを理解する必要がある。・メンバーに指示を伝える際には、方針を十分に理解して、自分の言葉で伝えていく必要がある。

職員育成において、本人が自身で考えて、能動的に行動しようとすることが大切であるため、リーダー はメンバーが自ら考え工夫させるように働きかけていく。またその際にはねらい、目的について明確に伝えていく。

リーダーになったら今までと同じことをしていてはだめ。全体を理解し、求められていることを果たす。

今までは子どもや保護者と向き合うことが多かったですが、メンバーのことを理解し、連携をとっていきたいです。

メンバーに共感することは大事。肯定も否定もしなくてもいい。どうしても肯定してしまいがちですが、意見に共感し、発言しやすい環境をつくっていきたいです。お互いの思っていることを通わせ、相手の思いを受け止める。コミュニケーションをとる際にどうやったら相手にうまく伝わるか...と考えることもありますが、まずは相手の気持ちを受けとめることが大事だと学びました。

一つの船に例えられた絵が印象的でした。みんなで同じ方向を向き保育できるために私ができることを探して、実行していきたい。

リーダーに向いている。向いていないはないということ。私は今までリーダーという立場になる事は少なく、苦手だと思っていました。自分なりのやり方を見つけクラスのリーダーとして頑張っていこうと思いました。

リーダーとはという部分。リーダーとは先陣をきってテキパキと仕切る今までのイメージが強く、自分には向いていないと思ってばかりいたが、何でも枠に囚われず、人それぞれのリーダー像をつくっていいと思えるようになった。

Q3:研修会の中で理解しづらかった内容や、 改善した方が良い点はどのようなことだと感じますか

グループワークの中の「動機づけ」や「職員育成(OJT)」など知らない言葉があったので、言葉の意味など説明していただけると 助かります。

ディスカッションを職場でする機会がなかった為 色々な意見を聞くことができ参考になりました。

理解しづらいというより、疑問点が残っている(後輩指導について)

理解しづらかった内容は特には思い当たらないが、最後の討論の問題は当てはまる物が多く、難しかった。

例え話等があり分かりやすかったです。

保育者の質問や悩みを中心に取りあつかって下さったので、とても充実した内容でした。

例えがドラマやが多かったので、分からないこともあったので、 もう少し分かりやすい例えにして頂けると良いなと思いました。

Q4:感じたことなどを自由にご記入ください。

話し合いの時間が多く、思っている事を伝えられたので楽しく参加できた。

目上の方ばかりの研修会だったので、始めは気負いしていたが、他の先生方と意見が合うところや自分が思っていたよりも、似たような考えを持ってみえる部分もあり、共感しながら話しを聴けました。

文字で書くと上手く伝わらないところも、言葉で意見を出し合える場面が多くどう思っているのか皆さんの考えを理解しやすく楽しい研修会に感じました。

自分がどういうタイプなのかも改めて見直す機会にもなったので、自分らしい姿を後輩にも伝えながら、よりよく働けるようにしていきたいと思います。

今まで自分がリーダーという立場になった事がなかった為、リーダーについて考えた事がなく、参加してよいのか正直迷っていた。しかし、いざリーダーという立場に立った時に何もわからないや、自分が思っていたリーダーと同じ事はできないので、今回、実際にリーダーという立場に立ってみえる方の話しや悩みを声に出して聴く事ができ、リーダーでない私にも充実した時間となりました。

リーダーとして上司からの伝達をメンバーに伝える際は、どうして行うのか、理由等、納得できてから自分の言葉で伝えることが大切だと学んだので、意識して行っていきたいと思います。貴重なお時間ありがとうございました。

自分自身に変化がなくても、役割によって周りからの見え方が変わるので、役割を演じる(求められることを果たす)ことが大切。

上司からの伝達をメンバーに伝える際は、どうして行うのか、理由等、納得できてから自分の言葉で伝えることが大切で伝えた際のメンバーの意見に対しては、否定も肯定もせずまず共感することが大切。コミュニケーションは意思疎通であり、大切なのは言葉をそのまま受け止める応答であること。

研修前に自分自身の目標を決めておいたことで、より深く研修に参加することが出来たので、今後も目標をもって参加するようにしたいと感じました。

研修開始時には緊張感が強くなってしまい、積極的に意見を述べることが出来なかったが、後半からは少しずつ発言も出来るようなったので、雰囲気作りの大切さを感じました。

自分の意見を発表することが苦手なので、今回の研修は緊張しましたが、このような機会を経て、保育園でも意見が言えるようになっていけるといいなと思いました。

学年リーダーを務めるに当たって、目標を立てる良いきっかけになりました。

すべて勉強になり、新しい発見があった。プリントのその他の例題の妥当案を知りたいと思った。

研修を受け、まだまだ迷う点もいっぱいありますが、リーダーとしてのベストをつくせるように行動に移していこうと思います。ありがとうございました。

リーダーについてもっと深く学びたいと思うと同時に、よりよきリーダーとは...と考えこみ今の自分がどこまで向上できるか不安になった。目的を立て達成できるようにしていきたい。

今回、初めてリーダー研修会に参加させていただきましたが日頃、学年リーダーとして務めさせていただくなかで、私自身が悩んでいたり、疑問に思ったりしていることが解消でき、とても良かったです。

また、今後仕事をしていく上での意識も大きく変わったので、実践していきたいです。

来年度、学年リーダーを務めさせて頂くにあたって、正直自分がリーダーなんてと思っていましたが、リーダーに向き不向きはないという話をきいて、前向きにとらえることができました。失敗をすることもあるかと思いますが、上の方針やメンバーのことを理解できるようにしていきたいです。

自分の中でのリーダーとしてのあり方や心掛けるべきことを考える良い機会になりました。

学んだことは、職員に対してだけでなく、保護者や子どもとの関係作りにおいても大切なことだと思いました。

リーダーの職務は仕事を通して、メンバーの能力開発と人間的な成長を図ること。できなかった事をできるようにしてあげる(技術)だけでなく、共に一緒の船に乗って、みんなで目標を達成するために中心的な存在となることを意識する。舟に例えられた絵が印象的でした。

メンバーの自律を促す向き保育できるために、リーダーの指示命令は、リーダーが楽をするためのツールに過ぎないこと。→メンバーの主体性を認めやる気につなげる。

リーダーとして「目標」を立てる手伝いをし、達成感を味わえるよう導く。とても勉強になりました。今後に活かしていこうと思います。ありがとうございました。

園長・主任・リーダー・メンバーと、立場で見ている景色が違うということ。それぞれ「保育園が良くなるように」という所は変わらないが、そのためにどこを見ているか違うということがわかった。

自分の役割を理解して行動していきたい。

クラスや学年において、リーダーの役割は大きく、メンバーはリーダーを見て動いたり考えたりするので、雰囲気づくりなども大切。上司の話した内容を理解し、自分の言葉でメンバーに伝えることが大事と強く感じた。

能力は開発するもの。与えられた条件のもとで最高のパフォーマンスができるよう、潜在能力を 選択的に開花させること。

何度言えばわかるの? 何回同じ失敗をするの? と思ったときは、相手の事だけではなく、自分の指導の仕方にも問題があると思って指導方法を変えていくことが大切。とても勉強になる研修会でした。

参加させていただきありがとうございました。

今回体調を崩してしまい、リモートでの参加だけでもありがたかったですが、次回はぜひ直接研修を受けさせていただきたいと思います。

これまで年齢・経験を重ねるにつれ、常に自分より年下の人と組むことしかなく、指導においてどのようなやり方が望ましいか、試行錯誤していましたが、自分が感じていたことや考えていたことの答え合わせができたようでとても勉強になりました。まずは自分にできることは何か、自分なりの目標を持って自分なりの リーダーを目指したいと思います。

今回の研修に参加させていただき、あらためて研修の大切さに気づきました。「リーダーになる」ということが、本当に漠然としすぎていて、責任だけ重くなっていくように感じていましたが、あらためて「自分がするべき事」のビジョンが、しっかりしてきたように思います。ありがとうございました。

今まで受けてきた研修の中で一番分かりやすく、仕事に活かせる内容だった。質問をする時間もたくさんあり、聞きやすかった。

リーダーとして不安に思っていることもたくさんあったが、考え方、気持ちの持ちようを教えていただき、心が少し軽くなった。ありがとうございました。

研修会を実施して

これまで、保育園・こども園での園内研修では、1回のみの実施ということはあまり経験がありません。園内研修実施のねらいが、マネジメント知識の習得だけではなく、参加職員一人ひとりの能力開発をねらいとしていることを考えた際、効果が期待できないと捉えてきたからです。ただ、いきなりどんな講師かわからない人間が半年や1年のプログラムを実施しましょうといっても、導入ハードルが高いのは当然頷けるところです。

いくら正しいことだと言ってもそこにはお互いに相性というものもあるのも事実で、今後園内研修導入をお考えいただく上でも、果たして信頼できる講師なのかを吟味いただく機会として園様にとっても有意義なのではないかと感じました。

同じ園で働く、同じ悩みを持った職員同士が、職員指導の仕方や、コミュニケーションの図り方などについて正しく学び、互いの悩みや、実際の現場でどう活かせば良いか…などを話し合える場はほぼ皆無だと思われます。園でも保育を優先してしまい、リーダーとしての学びの機会の提供にはやや後手を踏んでおられるのも実情です。しかし、せっかく採用した職員が思うように育たず、短期間で退職する等の問題は、実はリーダーの育成力にこそ課題が多いのものです。

リーダーが育たない。新しく入った職員の仕事への向き合い方をどうにかしたい。これからの課題を仕方ないとあきらめるのではなく、その機会を提供していくことで問題解決の糸口は見つかると思います。研修時間を捻出することに難しさを感じておられる園も多いですが、園としてリーダーとしての学びの機会を提供することはとても意味のあることだと思います。

今回の研修では、ほぼグループ討議とその解説、皆さんからの質問や現場での事例についての質御応答でした。皆さんが意見交換しつつ、お互いを知り、これまで自分なりに漠然と行っていたリーダーとしての仕事の進め方を、同じ悩みを持つ仲間として捉えることができる機会になったものと思います。

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