就職活動という産道をすっと通過した保育者は脆弱

前回のブログで、保育園・こども園に就職する保育者は「脆弱」だということを述べました。

採用試験に落ちたことがある方は非常に少ないのが実情で、そんな話を聴く度、何社も採用試験に落ち、苦悩した私にとっては大変うらやましく思うことがあります。

採用試験に落ちる度に凹み、自分の何処がいけないのだろうと考え、何をどう改善すればよいのかを悩み、もがくことなど誰も経験したくないはずです。

辛い。しかし・・・その苦しみや辛さを経験する過程で、未熟な学生が少し「磨かれ」「強くなる」のも事実です。

保育園・こども園に入職する学生のほとんどの方には「この経験」がありません。

磨かれる機会がないまま入職することから脆弱なのです。

しかし脆弱なままでは社会という荒波では到底生きていというのも然りです。

脆弱な新任職員を受け入れる先輩職員側の言い分

職員を受け入れる先輩職員側の言い分としては、

①      給料をもらって仕事している以上、最低限のことはしてもらわないと困る。(学校ではない)

②      わからないことがあったら、自分で聞いてくれないと困る。

③      保育スキルはなくても仕方ないけれど、人として、社会人として最低限の事くらいは身につけてきてほしい。

④      職場は仕事をする場、遊びの場ではない。

ざっとこんな感じでしょうか。「然り」です。反論の余地さえありません。

上記のことくらいの意識や姿勢は最低限身につけた上で仕事に来る「べき」だと考えてしまうのです。

新社会人(学生→社会人)の頃の「あなた」は既に上記のことを身につけていましたか?

確かに先輩側の言い分には一理あります。

しかし、新社会人で上記のスキルなり意識を身につけた人はどれほどいるのでしょう?少なくとも私は全然身につけていませんでした。

仕事の意味も、意義も、社会人として最低限身につけるべき事柄も、挨拶も、言葉遣いも・・・何もかも、全く身についていませんでした。

皆さんが20歳、22歳の頃はどうでしたか?私と似たようなものではないでしょうか。

きっと忘れてしまっているだけなのです。

新任側の言い分①

新任職員Aさん

わからいないことがわからない

上記の②に関連することですが、よく私たちは「わからないことがあったら聞いてね」なんて指導したりします。

私は研修講義の解説後、皆さんに「何か質問はありませんか」と聞くことがありますが、必ずといっていいほど返答は「大丈夫です」です。

あれ、実は何がわかっていて、何がわからないかさえも整理できていなくて「わからない」から発される言葉なのではないでしょうか。

実はそれと同じことが新任職員に起きていると思われるのです。

つまり、「わからないことがわからない」のです。

そんな時は指導した内容について、

「この点は理解できる?」や

「この点について、どうすればいいかわかる?」

などと実際に業務を進める上で疑問に思う点についての突っ込んだ質問を予めしてあげたり、

「進めているとこんな点がちょっとわからなくなると思うから、そのとき声かけてくれる?」

などと予め想定される壁について、先回りして次回のチェックポイントとして確認しておくなどの対処が必要です。

新任側の言い分②

新任職員Bさん

そんな言い方しなくてもいいんじゃないですか

新任職員は、組織の中では一番ひ弱な存在です。

自分ひとりでは餌を獲得することはできないので、指導を従順に承るしか方策を持ち得ません。

そして先輩からの視点を一身に受けることになります。

「最近の若い人たちはこんなこともわからないの?」や

「掃除なんてしたことないんだ・・・」

「え?箒の持ち方から??」

「こんなことも教えてもらってないの?」

と決して言葉には出ずとも、そんな軽蔑や嘲笑の視線を受けたりもします。実はこの雰囲気が耐えられな

いのです。

また、時に、何も出来ない駄目な人という視線と言葉で指導をする先輩がいます。

そんなとき、新任職員は何か欠陥商品のような、駄目な烙印を押された気分に陥るのです。

そんなことを感じると、もはや何か聞きたくても聞けない。それどころか「ここからいなくなりたい」と思ってしまいます。これは何も今の新任職員の辛抱のなさの問題ではありません。

「聞きたくても聞けない」「聞きたくもない」→「聞けない内に時間だけが経過する」「仕事が楽しくない」→「仕事が進まず期限が到来する」→時限装置が爆発する・・・。のです。

それでも先輩職員の中には、「そこを乗り越えるべきでしょう」と仰る方がいるのですが、残念ながら、それでは人は育ちたくても育ちません。

「私たちの若い時はその洗礼を乗り越えてきたから、あなた方も乗り越えるべき」というのではなく「私は若い時、そんな洗礼を受けてきたからこそ、新任にはそんな指導をしないようにしよう」と、負の遺産の連鎖を断ち切る指導を心がけ、新任育成を通じて、先輩職員が自分自身を振り返っていただければと思います。

間違いなく、新任職員は先輩職員の鏡なのです。

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